- 大井美知男/市川健夫 A5判 283p(カラー176p)2415円(税込) 2011年10月5日発行
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- 変化に富む自然を有し東西文化の融合点である信州は在来品種の宝庫だ(全国トップ)
- 私たちの食事には野菜が欠かせないものとなっているが、毎日食べている野菜のうちで日本原産のものはミツバ、ウド、セリ、フキなどごくわずかで、いかにも日本的な食材のように思われる大根、蕪でさえ外来であって、ほとんどの野菜が外国原産である。(中略)日本の長い歴史を通じて人づてに様々な経路をたどり、多種にわたる野菜類が世界中から続々と伝播してきて、各地の自然環境や風俗習慣、あるいは、時々の文化に合わせて多くの在来品種が食文化とともに生まれることとなる。
しかし、残念なことに昭和30年代後半からの高度経済成長に起因する合理性や均質性の価値観の変化から、農業も工業化を余儀なくされることとなって、収量性が低く不揃いで強い個性をもつ在来品種の多くは、その歴史も文化も情緒も顧みられることもないまま、その多くがまたたく間にF1品種に駆逐されてしまった。
- 日本列島の中央に位置する長野県は、豊かで変化に富む自然と同時に、日本の東西文化の融合点として、歴史的に多様な文化の集積地として位置づけられる。こうした自然と文化の織りなす環境のもとで誕生して継承されてきたのが信州の在来品種である。江戸時代中期にまとめられた『享保・元文諸国産物帳』には、信濃、木曽、高遠領をあわせて、菜類だけでも146という諸国の中でもひときわ多い品種数があげられていることからも、様々な文化が伝播し、作物の品種についてもその例外ではないことがうかがえる。近年、全国的にみれば在来品種の多くがその姿を消していったなかにあって、長野県は今日まで実に多彩な在来品種が栽培されながら維持されている特異的な地域といえるが、隔離された里地の地理的条件と、在来品種と表裏の関係にある伝統食の文化の伝承が、これを可能にした大きな要因だと思われる。(後略)(あとがきより)
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- 信州の農耕文化と風土食(市川健夫)
- 照葉樹林文化の五穀
- 第二次世界大戦下の食糧事情
- 隔絶山村・秋山郷にみる主穀の変化
- 漬菜の盛衰と種子の保存
- 欧米からの導入作物とその定着
- 風土が産み出した食の文化財
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- 第1章 信州の伝統野菜(大井美知男)
- 【漬菜】
- 野沢菜(野沢温泉村・全県) 加工適性に優れた「お葉漬け」の代名詞
稲核菜(松本市安曇) きわだった旨さの「長野県の三大漬菜」
諏訪紅蕪(茅野市) 絶滅寸前に至る南信の主要品種
羽広菜(伊那市) 絶滅寸前から復活した優しい味わい
木曽菜(福島菜)(木曽町) 町村合併の歴史を映す名称の変遷
源助蕪菜・飯田蕪菜(飯田市・下伊那) 民間育種場で育成された諏訪紅蕪の後継
飯田冬菜(飯田市・下伊那) 冬期の貴重な葉物野菜
- 【蕪】
- 保平蕪(松本市奈川) 優しく女性的な野麦峠の蕪
細島蕪(木祖村) 十数戸が守り続けるおふくろの味
開田蕪(木曽町開田高原) 江戸時代以来の名声がスンキで定着
三岳黒瀬蕪(木曽町三岳) 消滅の危機から復活した幻の蕪
王滝蕪(王滝村) 戦国の転封によって山形から伝播
芦島蕪(上松町) 由来に謎を残す県内最大重量の蕪
吉野蕪(上松町) わずか数戸が守り抜く大根型の蕪
赤根大根(清内路蕪)(阿智村清内路) 煙草売りや木地師が持ち込んだ紅蕪
- 【大根】
- 前坂大根(山ノ内町) 温泉旅館のたくあん漬け
戸隠大根(長野市戸隠) 江戸でそばの薬味として名を馳せた辛味大根
たたら大根(長野市) 平成の世に復活した希少な赤色品種
灰原辛味大根(長野市) 「辛味コンクール」で多数入賞する局地品種
上平大根(千曲市) 辛さの中に甘みがある「あまもっくら」
ねずみ大根(坂城町) 「おしぼりうどん」を軸にした幅広い町おこし
山口大根(上田市) 辛味と甘味が調和した昭和初期の代表品種
牧大根(安曇野市穂高) 香味豊かな糠漬けたくあんの代表格
切葉松本地大根(松本市・東筑摩) 緻密で硬い肉質とギザギザの切れ葉
上野大根(諏訪市) 品種改良で甦る300年の歴史
親田辛味大根(下條村) 朝鮮半島〜尾張をルーツとする特異品種
- 【ジャガイモ】
- 下栗芋(飯田市上村) 天恵の高地に育つ肉質緻密な小形イモ
くだりさわ(飯田市南信濃) 天明の大飢饉で広がった救荒のジャガイモ
むらさきいも(売木村) 南アルプスをはさんだ深い交流の産物
平谷いも(平谷村) 低収量性でも守るに足る独特の味覚
清内路黄いも(阿智村清内路) 長崎を起源とする高澱粉の黄いも
- 【サトイモ】
- 坂井芋(飯山市) 甘味・うま味に優れるサトイモ
あかたつ(南木曽町) 葉柄を漬物などに重用するサトイモ
- 【ワサビ】
- 穂高山葵(安曇野市穂高) 北アルプスの湧水が育む名脇役
- 【ゴボウ】
- 常盤牛蒡(飯山市) 江戸後期に導入され昭和初期に県外へ伝播
村山早生牛蒡(須坂市) アクが少なく軟らかな千曲川の恵み
- 【ネギ】
- 松本一本ねぎ(松本市・山形村) 植え替えで軟らかさと甘みが増す曲がりネギ
千代ネギ(飯田市) 根深ネギと葉ネギが交雑した多用途品種
- 【キュウリ】
- 八町きゅうり(須坂市) 昭和初期に隆盛した「霜しらず」の近縁種
番所きゅうり(松本市安曇) 高冷地に伝わるシベリア系・華北型の交配種
羽淵キウリ(塩尻市) 木曽と伊那の経済・文化をつなぐ雑種系
開田きゅうり
(木曽町開田) 大正〜昭和に作出した華南型・華北型の交配種
清内路きゅうり(阿智村清内路) 肉質が歯切れよい華北型「立秋」の後継種
鈴ヶ沢うり(阿南町) 山里に導入当時の姿を保つ霜しらず系
伍三郎うり(天龍村) 物語る三河・遠州との交易の歴史
中根うり(飯田市南信濃) 孤高に生きるシベリア系の貴重品種
- 【シロウリ】
- 沼目越瓜(須坂市) 広く全国に名を馳せた豊産の品種
松本越瓜(松本市) 果肉の厚さや歯切れに優れる大形の豊産種
本しま瓜(下伊那) 黄緑の条斑が鮮やかな粕漬け用シロウリ
- 【ナス】
- 小布施丸なす(小布施町) 二度にわたる消滅の危機を乗り越えた丸ナス
ていざなす(天龍村) 果肉が軟らかく超大形の米ナス系
鈴ヶ沢なす(阿南町) 冷涼地にもかかわらず存続する九州の長ナス系
- 【カボチャ】
- 清内路かぼちゃ(阿智村清内路) 国内唯一生き残った明治時代の先駆け品種
- 【トウガラシ・ピーマン】
- ぼたんこしょう(信濃町・中野市) 冷涼地に育まれる爽やかな辛味
ひしの南蛮(小諸市) 未熟果をふくめ煮にする独自の調理法
そら南蛮(小諸市) 空に向かって成る欧米型品種
- 【その他】
- もちもろこし(信濃町) カナダ人牧師由来の懐かしいトウモロコシ
穂高いんげん
(安曇野市穂高) 実がしまって濃厚な菜豆
御牧いちご(小諸市) 高度経済成長期に衰退したジャム専用品種
- 【コラム】
- スーパーの野菜と在来品種
大根と蕪・漬菜品種の分布
日本の東西文化と長野県の伝統食・郷土食
日本各地の伝統野菜の認定事業
- 信州伝統野菜認定制度と品種改良
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- 第2章
信州の伝統作物と食文化(市川健夫)
- 【野菜・果物】
- 二度芋 甲州から伝播したジャガイモの原種
川中島茄子・小布施茄子 千曲川の沖積地に育つ丸ナス
鼎胡瓜・島立胡瓜・横田胡瓜 内陸性気候と扇状地が育んだ夏野菜の盛衰
沼目越瓜 ベトナムから中国を経て伝来
戸隠大根(景山大根)・親田大根 江戸時代から好まれる麺類との相性
野沢菜 北海道から九州まで栽培が広がる多収の漬菜
稲核菜 小型ながらも独特の風味
末川蕪(開田蕪)・王滝蕪 無塩の漬物「スンキ漬」の原材料
羽広菜・源助菜ほか 篤農家と種苗商の熱意で普及した伊那・諏訪の漬菜
山葵 安曇野の湧水がもたらす辛味と風味
薬用人参 古代からの漢方薬
和林檎(リンキ・高坂林檎) 和林檎から西洋苹果への変遷
立石柿・市田柿 江戸時代における果実の王者
- 【穀物】
- 赤米・紫米 寒さに強く栄養価も高い古代米
伊賀筑後オレゴン種(小麦) 粘り気が強いわが国最高の饂飩粉
中尾早生(大豆) 栄養・風味に優れた在来種
蕎麦 山村の主穀から信州食文化の主役へ
荏胡麻 燈油・食用油から健康食品へ
稗 貯蔵性に優れた救荒作物
粟・黍 「雑穀」に分類されながらも「五穀」の主要作物
四国稗 山地で発揮される強い生命力
- 【山の幸】
- 山菜 深雪地帯の融雪がもたらす恵み
山栗 縄文時代の主要食糧
小布施栗 600年の栽培史と栗菓子の伝統
ブナの実 復活させたい「蕎麦粒」の香煎
トチの実・ナラの実 備蓄食糧から観光資源へ
クマザサの実 薬効と栄養価に富む森林資源
和蜂蜜 高密度で芳香な「百花蜜」
山肉 大町・秋山郷・遠山郷にみる狩猟の伝統
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